服をつくるとき、
デザインより先に、素材と出会うことがあります。
どこで生まれたのか。
どんな糸が使われているのか。
どのように織られ、仕上げられているのか。
土地や原料、つくり方が違えば、
生まれる表情も変わります。
ふわりと空気をはらむ、柔らかなウール。
何色もの糸が重なり合う、
奥行きのあるチェック。
デニムのような表情を持ちながら、
しなやかに揺れるキュプラ。
今回の
「UNE FEMME, TROIS VISAGES」では、
それぞれ異なる背景を持つ3つの素材を選びました。
素材が持つ個性を見つめながら、
そこから生まれた3つのブラウス。
今回は、その素材が生まれた背景と、
なぜこの一着に選んだのかを紐解きます。
01|CHEMISE ODETTE
尾州で仕立てた、柔らかなウール

Odetteに使用したのは、
世界有数のウール産地として知られる尾州で、
aLORSのために織り上げたオリジナルのファブリック。
細番手のウールとコットンを組み合わせ、
織りの密度をあえて粗く設計しています。
ウールを含みながらも重くならず、
軽やかで、ほのかな透け感のある生地。
触れるとさらりとして、
身体との間に心地よい空気をつくってくれます。
けれど、この生地の魅力は、
ただ軽いことだけではありません。
近くで見ると、
細かな織りによる立体感があります。

その表情が、フリルに仕立てたときにも、
生地をぺたっと平面的に見せることなく、
ふわりと空気をはらんだような立体感を生み出します。
可愛らしさの奥に、
細かな織りがつくる静かな奥行きがある。
その表情に、
Odetteというブラウスの物語を重ねました。
可憐でありながら、
ただ甘いだけではない。
柔らかさの中に、
自分の意志を持つ女性へ。
そのために選んだ素材です。
MATERIAL NOTE
尾州は、愛知県西部から岐阜県にまたがる、
日本を代表する毛織物の産地。
古くから毛織物づくりが盛んに行われ、
紡績から織り、染色、整理加工まで、
さまざまな工程を担う技術が集まっています。
aLORSでは、その尾州のものづくりを背景に、
細番手の梳毛(そもう)ウールとコットンを組み合わせ、
オリジナルの生地を仕立てました。
梳毛とは、羊毛をすいて短い繊維を取り除き、
長い繊維を揃えてから糸にする製法。
毛羽が少なく、
なめらかな風合いが生まれるのが特徴です。
この素材は、2024年秋冬コレクションの
「Lilyブラウス」にも使用。
「季節の端境期に活躍した」
「暖冬の冬にちょうどよかった」
そんな声をいただいたことも、
今回もう一度この素材で新しいブラウスをつくるきっかけになりました。
02|CHEMISE CLAUDE
イタリア・ビエラで織られた、色の重なり

Claudeに選んだのは、
何色もの糸が重なり合うことで生まれる、
奥行きのあるチェック生地。
レッドも、単純な赤ではありません。
ボルドーやブラウン、ネイビー。
オリーブにも、
グリーンだけではなく、ブラウンやグレー、
そこに赤が重なっています。

複数の色が重なることで、
少しくすんだ色や深い色が生まれる。
一見するとクラシックなタータンチェック。
けれど、近くで見ると、
その色の組み合わせには、
ひとつの色では表現できない複雑さがあります。
こうした色の重なりから生まれる、
深みのある色合いは、
日本国内ではなかなか出会えない、
イタリアならではのもの。
その絶妙な色彩に惹かれ、
この生地をClaudeに選びました。
タータンチェックはもともと、
ただの装飾ではなく、
土地や家系、所属といった背景を纏う柄でもあります。
華やかさがありながら、
どこか実直で、媚びない。
そんなチェックの個性を活かし、
端正なシャツではなく、クロップド丈に仕上げています。

伝統的な素材に、
ほんの少し既定路線から外れるデザインを重ねる。
クラシックなものを、
そのままクラシックに着ない。
そのバランスが、
Claudeらしさをつくっています。
MATERIAL NOTE
イタリア北部・ビエラは、
長くウール産業とともに発展してきた土地。
豊かな水資源と、
紡績・織り・染色・仕上げまでの技術が集まり、
現在も多くの上質なウールファブリックが生まれています。
今回の生地を手がける〈CAMPORE〉も、
1830年の創業以来、
この地で織物づくりを続けてきたメーカーのひとつ。
約200年にわたり培われてきた技術と、
イタリアならではの色彩感覚。
何色もの糸を重ねながら、
派手になりすぎず、複雑な色をつくる。
Claudeに使用したチェックにも、
ビエラのものづくりと、
この土地ならではの美意識が表れています。
03|CHEMISE MAUD
デニムのようで、デニムではない。

Maudに使用したのは、
タテ糸・ヨコ糸ともに
スパンキュプラ100%で織り上げた生地。
見た目には、
デニムのような力強さがあります。
けれど、身体にのせると、
その印象は大きく変わります。
柔らかく、しなやかに落ち、
動くたびに布が身体に沿って揺れる。
そして光を受けると、
インディゴブルーの中に、
ほのかな艶が浮かびます。
胸元から裾にかけて入れたギャザーも、
この素材だからこそ生きるディテールです。

布が重なる部分には深い陰影が生まれ、
動くたびに青の濃淡が変わって見える。

身体の中心へ視線を導きながら、
肌を見せることなく、
身体の曲線を感じさせます。
そこにあるのは、
露骨なセクシーさではなく、
もっと静かで、内向きな官能。
自分の中にそっと持っているような色気です。
だから色も、
強く断言するような黒ではなく、
インディゴブルーに。
深い紺にも、
光の中では澄んだ藍にも見える。
その掴みきれない色の揺らぎも含めて、
Maudの表情をつくっています。
MATERIAL NOTE
キュプラは、
コットンの種子のまわりに残る短い繊維、
コットンリンターを原料としてつくられる再生繊維です。
なめらかな肌触りと、
しなやかなドレープ性を持つことが特徴。
見た目のタフさと、
キュプラならではのしなやかさ。
その意外な組み合わせが、
この生地ならではの個性です。

尾州で仕立てた、
aLORSオリジナルのウール×コットン。
イタリア・ビエラ地区で生まれた、
何色もの糸が重なるチェック。
そして、
キュプラ100%で織り上げた、
デニムのような表情を持つ素材。
生まれた場所も、
使われている糸も、
持っている性質も異なる3つの素材。
だからこそ、
そこから生まれる服の表情も違います。
可憐さの中にある、意志。
伝統の中にある、反骨心。
強さと柔らかさの間にある、
静かな官能。
素材を選ぶことは、
一着の表情を選ぶこと。
そして、その服を着る女性の
新しい一面を想像することでもあります。
3つの素材から生まれたブラウスが、
あなたの中にある
まだ知らない表情と出会うきっかけになれば。
UNE FEMME, TROIS VISAGES.